安静は体にいいのか?
95歳 私の証 あるがまま行く
日野原重明
安静は体にいいのか?
病院に入院する人の多くは、病室に入るとパジャマや検査衣に着替えて、ベッドの上で安静にしているものです。
手術や治療のための入院に限らず、特に悪いところのない検査入院の場合でも、ほとんどの人はおとなしく過ごしています。
とりわけ普段から忙しく過ごしている人は、ベッドに横になる時間が多くなりがちです。
どうやら、安静にしているほうが、体力が回復すると思い込んでいるようです。
たしかに90年代までは、医学や看護の専門家の間でも、安静は良いものだと思われていました。
しかし、何もせず仰向けに寝ているだけで、病状や体調が良くなり、体力がつくということに根拠はありません。
21世紀に入り、体を動かさないでじっと寝ている「不動」の状態は、内臓や骨、筋肉、感覚器などにかえって悪影響を与えることが実証されました。
消化器系や泌尿器・生殖器系の器官の働きが規制され、便秘や体内に浮腫を起こすという結果も報告されています。
筋力の衰え、骨粗鬆症、血行障害など、さまざまなトラブルを生じます。
65歳以上を対象にした最近の米国の研究では、高齢者が10日間、トイレ以外に動かないでベッドの上に寝たままでいると、健康な人でも骨格筋が衰えてしまうことが実証されました。
この研究結果のように、過度な安静状態は、かえって高齢者をダメにしてしまいます。
この事実を、日本でも広く浸透させたいものです。
これは高齢者に限らず、一般の入院患者にも当てはまることなのです。
欧米に比べて、日本の病院の入院期間は長いことで知られていますが、最近は少しずつ短くなっています。
経済協力開発機構の調査によると、病気の発症直後や、症状の変化が激しい急性期の患者の平均在院日数は、95年には約33日でしたが、03年には約20日に短縮されています。
ちなみに聖路加国際病院の現在の平均は10日です。
外科的手術も、今日では日帰りできるものが増えてきました。
入院を要する手術や治療の場合でも、術後は可能な限り体を動かすことを患者にすすめる病院が増えています。
体を動かすほうが、病気の早期回復につながるからです。
いっそのこと、昼間はベッドを壁の中に片付けるという、新しいスタイルの病室をつくったらどうかと私は考えています。
皆さんはどう思われますか?
(2007年6月2日 朝日新聞)
・私は、病衣(検査衣)に着替えることが嫌だった。
病衣(検査衣)を着用すると、それだけでいかにも病人らしい沈んだ気分になってくる。
大袈裟な表現をすれば、まるで不治の病に冒されているような暗澹たる気持ちになる。
必要な際には、病衣(検査衣)は着用したが、必要でない時には、普段運動をするようなハーフパンツ・Tシャツを着用した。
それも、お気に入りの派手なハーフパンツ・Tシャツを選んだ。
このようなハーフパンツ・Tシャツを着用しているだけでも、滅入る気分は軽減される、少し体を動かしてみようかという意欲も湧いてくる。
手術前まで、医者の許可を得る範囲内でジョギング・ウォーキングをした。スクワット・腕立て・腹筋運動などもした。
術後もできるだけ、体を動かした。
病棟内の散策?も実践した。
病院の外の散策は、時間をかけてのそろりそろり歩行で始まった。
・大学病院の先生方も、体を動かした方が早い快復につながると話してくださった。
日記を読み返してみると、手術の翌日は、一般病棟に移り、2日目には、病棟内を歩いている。
人間の体は、本来、動かなければ退化するという文章を読んだ記憶がある。
私もそうだと納得しているので、気安く実践できたのだろう。
・
最初の手術の際には、さほど感じなかったが、2度目の手術(急性虫垂炎)を経験して、痛切に感じたことがひとつある。
それは、筋力と柔軟性との低下。
今まで普通にできたことが、多々できなくなっていることに気付いたショック。
例えば、伸脚運動の際に、膝を深く曲げることができなくなっていた(膝を深く曲げて、体重を支えることができなくなっていた)。
足を前方に振り上げる運動。以前は、頭の位置まで足を振り上げることができたのに、腰の位置までも足を振り上げることができない。
・医者をしている卒業生から「焦りが一番の禁物だ」という励ましをいただいた。
焦らずに、少しでも快復に向かえるように、努力したい。
(kubo_g)
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